チャットレディの報酬は、給与ではなく業務委託として支払われることが少なくありません。そのため、なかには個人事業主として開業届を提出するべきかどうか、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
開業届とはどのようなものか、チャットレディは開業届をするべきなのか、開業届提出に関する疑問への回答をメリットとともにご紹介します。
具体的な開業届の出し方や提出書類と用意するものなど、届け出のポイントについても解説しているため、ぜひご覧ください。
Contents
1. 「開業届」とは|チャットレディは個人事業主?
チャットレディで得たお金の支払い明細を見ると、「給与」とは異なる名目で支払われていた、という経験のある方は多いでしょう。求人サイトに登録してチャットレディの仕事をしていても、業務委託扱いで「報酬」としてお金を受け取っているケースは珍しくありません。
このような場合は、給与所得のアルバイトやパートではなく、個人事業主としてチャットレディの仕事を行っていることになります。
1-1. そもそも開業届ってなに?
開業届とは、新たに事業を始めた際、所属エリアの税務署・各都道府県税事務所へ届け出ることです。
個人事業を始めた人すべてが開業届を提出しているわけではなく、開業届を出していないことに対する罰則も存在しません。そのため、チャットレディとして働いている方も、開業届を提出するかどうかは個人の自由です。
それでは、開業届を出すとなにが変わるのでしょうか。
1-2. 開業届を出すメリット
提出しなくても罰則のない開業届ですが、場合によっては開業届を出すことで大きなメリットを得られる人もいます。
開業届することで得られる最大のメリットは、青色申告ができる点です。
・もしくは10万円の控除を受けられる
チャットレディの所得に大きく関わる青色申告のメリットは、上記の2点です。開業届を出さずに確定申告する場合は白色申告を行うことになります。青色申告と白色申告の大きな違いのひとつが、所得控除の有無です。
青色申告は65万円の青色申告特別控除を受けられるため、所得を低く抑えることが可能です。青色申告では複式簿記での記載が義務となりますが、65万円ではなく10万円の控除でも構わなければ簡易簿記を選択できます。
注意点は、開業届を提出しただけでは青色申告を利用できないことです。青色申告として計上する予定の年の3月15日までに、管轄の税務署に申請書を提出してはじめて青色申告が利用可能となります。
青色申告を利用するための「青色申告承認申請書」は、個人事業主用の「所得税の青色申告承認申請書」の他、法人用の「青色申告の承認申請書」があります。間違って法人用を提出しないよう、注意してください。
1-3. チャットレディのお仕事で経費として計上できる支出は?
チャットレディで確定申告をする場合、仕事で使用するものについては必要経費として申告書類に計上できる可能性があります。経費になるかどうか分からないものは、税理士などの専門家か税務署に相談しましょう。
・ウェブカメラの購入費
・インターネット料金
・コスプレ衣装やウィッグなどの衣装代
・家賃や光熱費
・化粧品
上記のような購入費や使用料が経費に計上できますが、家賃や光熱費・化粧品・インターネット料金などは、プライベートで使う割合と仕事で使う割合に応じて一部のみを計上しなければなりません。
2. チャットレディは開業届を出す必要はあるの?
チャットレディでも開業届を出すことは可能です。ただし、チャットレディとして働く場合、開業届を出さなくてもいい人と、出した方がいい人どちらも存在します。ここからは、チャットレディが開業届を出すべきかどうかについて解説します。
2-1. チャットレディは開業届を出すメリットが小さい
チャットレディを始めたばかりの人や、副業として一時的にチャットレディをしている方にとっては、開業届を出すことに大きなメリットがあるとは言えません。
青色申告のメリットを得るには、事業所得として1年以上継続させる必要があります。チャットレディを始めて1年未満の方や、1年も続けるか分からないという方は、帳簿の記入が複雑化するため手間も時間もかかる青白申告することは、デメリットとも言えるでしょう。
さらに、青色申告で申告する収入は「事業所得」です。主婦や学生など副業やお小遣い稼ぎ程度の仕事しか行っていない方は、青色申告できる「事業所得」ではなく、白色申告の「雑所得」として申告すべき場合もあります。
・継続的とは言えない収入や副業…雑所得
多少の節税効果でも構わない、と考える方もいるかもしれませんが、一度開業届を提出すると、辞めるときは廃業届も提出しなければならない手間が増えることも覚えておきましょう。
チャットレディを始めたばかりの人や少額の報酬しかもらっていない方は、開業届を出す必要はないと言えるでしょう。
2-2. 高額の報酬がある場合は開業届を出すことで節税できる!
ただし、報酬が高額なチャットレディは、開業届による事業登録と青色申告をおすすめします。継続的に大きな所得を得ている人ほど、65万円控除などの青色申告のメリットを得られます。
開業届を出す目安は、所得が330万円を超えるようになったときです。所得は収入から必要経費を差し引いた金額で、年収では400万円前後が目安となります。
・195万円以下…5%
・195万円~330万円以下…10%
・330万円~695万円以下…20%
・695万円~900万円以下…23%
・900万円~1,800万円以下…33%
所得額ごとに課される税率は、このように330万円から急激に大きくなっています。そのため、所得が330万円超えるような高額報酬のチャットレディは、節税効果を高められる開業届をおすすめします。
3. 開業届の「書き方・出し方・必要なもの」総まとめ!
開業届を提出するには、まず開業届の提出先と入手先について知っておきましょう。開業届は国税を管轄する税務署と、地方税を管轄する各都道府県税事務所に提出します。
個人事業主は都道府県税事務所への申告をしなくても、税務署から通達してもらえるため、開業届を提出する際は税務署のみで十分です。
②必要事項を記入する
③税務署へ提出する
開業届は、上記の3ステップで完了します。
①「個人事業の開廃業等届出書」は、税務署でもらうか、税務署のホームページでダウンロードします。
②氏名・電話番号・マイナンバーなどの他、納税地や開業した場所なども記入します。それぞれの項目のポイントは、以下のとおりです。
・氏名…開業する本人の氏名
・生年月日
・個人番号…マイナンバー
・職業…動画配信サービス業など
・屋号…空欄でも提出可能
・開業した場所の住所…(※住所と同じでも可)
・所得の種類…事業所得
・開業日…開業してから1か月以内
・事業の概要…職業と同様
納税地は、自宅で仕事を行うのであれば自宅住所を記入します。専用の部屋を借りているなど事務所を別に構えている場合は、事務所や専用の部屋を納税地として登録可能です。
ポイントは、「職業欄」と「事業の概要」欄です。チャットレディとそのまま書いても問題ありませんが、正直に書くことに抵抗感がある人も多いでしょう。この場合は、大まかな内容を記載することもできます。
・インターネット接客業
・インターネット事業 …など
具体的な内容を書くのではなく、インターネットを利用してサービス業を行っている、動画配信を行っている、と説明する程度で十分です。近年は動画配信サイトで活躍する人が多いため、このような書き方をしてもチャットレディだと周囲に感づかれる可能性は低いでしょう。
開業日の記載は、事業スタートしてから1か月以内に開業届を提出する必要があるため、書類提出日が開業してから1か月以内になるように記載します。
③書類の記載が終わったら、印鑑とマイナンバーが確認できるもの(マイナンバーカードや住民票)を持って税務署へ行きます。問題がなければ、10分程度で開業届の完了です。
まとめ
チャットレディは開業届を提出しなくても個人事業主として仕事ができますが、所得が330万円を超えるのであれば、開業届を提出した方が節税できます。開業届を出すと青色申告が可能となり、65万円の控除を毎年受けられるなど、メリットがあります。
ただし、1年以上は継続するなど条件もあるため、報酬が少ない方やチャットレディの仕事を短期で行っている方は、通常の確定申告の方が手間も労力も少なくて済むためおすすめです。
自分の報酬額に応じて開業届を出すのか・出さないのかを決めましょう。