シングルマザーとして働いていて、所得税や住民税のことが気になることもあるのではないでしょうか。また、税金に関してよく耳にする確定申告とはどのような場合に必要で、申告しないとどうなるのでしょうか。
このように、シングルマザーに関わる税金について様々な疑問が出てくることでしょう。そこで、この記事ではシングルマザーの確定申告について詳しくご紹介していきます。税金の疑問や悩みを持っている人は、ぜひ参考にしてください。
目次
シングルマザーと確定申告の関係は?
ここでは確定申告がどのようなもので、シングルマザーにはどのような関係があるのか、確定申告と年末調整がどう違うのかを説明します。
確定申告とは
確定申告は、1年間の所得を申告して、払うべき所得税と住民税を決定する手続きです。年末までに確定した所得を翌年の申告期間(2月16日~3月15日)に、管轄の税務署に申告します。
確定申告は所得税の申告ですが、住民税は税務署からの通知にもとづいて自治体が計算するので、改めて申告する必要はありません。シングルマザーも、一家の働き手として収入がある場合は税金の申告をしなければなりませんが、会社で行なう年末調整だけでよい場合と、自分で申告する必要がある場合があります。
年末調整と確定申告の違い
会社に勤めている場合は会社でまとめて社員の税金を申告するので、個人で確定申告をする必要はありません。会社は、毎月の給料から税金を差し引いて(源泉徴収)、あらかじめ国に納付しています。
年末調整とは、会社が社員の税金を申告するために、個々の社員から事情を聞いて所得を確定する手続です。例えば、子どもが16歳になり扶養控除の対象になったときは税金の払い過ぎが生じているため、年末調整することで払いすぎた税金が還付されます。
確定申告は、会社勤めをしていないフリーランス、あるいは複数の会社で仕事をしている場合に必要になります。そのためシングルマザーの場合も、ダブルワークや副業をしているなどの働き方によっては自分で確定申告する必要があります。
確定申告が必要ない場合
1つの会社で働いている場合、あるいは会社の給与以外の収入が年間20万円以下の場合は、確定申告の必要はありません。それぞれ詳しく説明していきます。
勤務先が1カ所で、会社で年末調整をしている場合
1つの会社で働いて給料を得ている人は、会社で年末調整をするだけでよく、確定申告の必要はありません。夫と離婚あるいは死別している場合は、それを年末調整のときに会社に伝えることで、所得税と住民税が安くなります。これを寡婦控除の申告といいます。
夫と離婚あるいは死別した女性を税法では「寡婦」と呼び、子どもがいる場合は基本的に所得から27万円が控除されます。控除とは、課税所得から差し引くという意味で、その分税金が安くなります。しかし、シングルマザーでも結婚や離婚の経験がない、いわゆる未婚の母の場合は、寡婦とはいわず、寡婦控除もありません。ただしその場合も、子どもがいることを会社に伝えることで住民税が安くなります。
■参考:国税庁
副業の所得が年間20万円以下の場合
会社からもらう給与の他に副業の収入がある場合でも、副業所得が年間20万円以下の場合は、申告義務はありません。ただし、副業所得が源泉徴収されている給与の場合は、確定申告することで払いすぎた税金が戻ってくる場合があります。
確定申告が必要な場合
確定申告が必要なのは、会社勤めではなくフリーランスで収入を得ている場合と、会社の給与以外の副業所得が年間20万円以上の場合です。それぞれ詳しく解説していきます。なお、下記で説明する以外に給料を2ヶ所以上からもらっている場合も確定申告が必要になります。
自営業の場合
収入が勤務先からの給与ではなく、フリーランスのライターやデザイナーなど、自営業としての稼ぎの場合は確定申告が必要です。自営業の収入は、売上から必要経費を引いて「事業所得」として確定申告します。
副業の所得が年間20万円を超える場合
会社勤務以外に副業があり、その所得が年間20万円を超える場合は、会社で年末調整をしていても、確定申告をする義務があります。注意したいのは、20万円とは売上や報酬などの「収入」ではなく、そこから必要経費を差し引いた「所得」だという点です。例えば、副業で雑誌の原稿を書いて報酬を得た場合は、報酬額から取材費や交通費などの経費を差し引いた額が所得になります。
ただし、副業がパートやアルバイトなどの給与収入の場合は、手取りの収入が20万円を超えると確定申告が必要です。給与収入の必要経費にあたる給与控除を差し引いた額が20万円以上という意味ではありません。パートやアルバイトが副業の人には不公平感がありますが、確定申告で税金を計算するときには給与控除を差し引くことができます。
副業所得20万円以下でも確定申告すると税金が還付される場合
副業の所得が20万円以下でも、確定申告することで税金が還付される場合があります。つまり、義務ではないけどお得な場合があるのです。それは、副業の収入も源泉徴収されている場合です。
源泉徴収率は、原稿料などの報酬の場合は10.21%、アルバイトやパートの給与の場合は年間20万円以下なら3.063%です。どちらも還付金がある場合が多く、とくに報酬の場合は必要経費を差し引く前の額に10.21パーセントという高い税率で源泉徴収されているので、還付金の額も大きくなります。
年間10万円以上の医療費がかかったとき
医療費はときに高額になって家計を圧迫することがありますが、年間10万円以上の医療費がかかったときは、10万円を超えた分が所得から控除されます。年末調整では医療費控除を受けられないので、給与所得者が医療費控除を受けるには確定申告する必要があります。
ドラッグストアで年間12,000円以上薬を購入した場合も、12,000円を超えた分が控除されます。これはセルフメディケーション税制という新しい制度で、軽い病気なら病院に行かずに薬局の薬で対応する人にはメリットがあります。しかし、従来の医療費控除と併用はできないのでどちらかお得になる方を選びます。
セルフメディケーション税制の対象になる医薬品は、「スイッチOTC医薬品」と呼ばれる約1,800種類の市販薬です。厚生労働省のホームページに「セルフメディケーション税制対象品目一覧」が掲載されているので、自身が購入する医薬品が対象になっているか確認するようにしてください。
確定申告の仕方は?
確定申告は、国税庁指定の申告用紙に必要事項を記入し、管轄の税務署に提出します。記入の仕方は慣れないと難しく感じますが、一度経験すると2年目からは楽になります。具体的にどのように確定申告を行うのか説明していきます。
確定申告に必要なものは?
確定申告のときに必要な提出書類は、「年末調整を受けている会社があって副業の所得を申告する場合」と「フリーランス、自営業の場合」で異なります。
年末調整を受けている場合は、そこで必要書類の確認が済んでいるので、税務署への提出書類が少なくなります。
確定申告に必要な書類
- 確定申告書A(自営業の場合は確定申告書B)
- マイナンバーカードまたはマイナンバー通知書のコピー
- 運転免許証など本人確認の書類のコピー
- 源泉徴収票(給与や報酬の支払先に発行してもらう)
- 社会保険料控除証明書※(年末までに郵送で届く)
- 生命保険支払額証明書※(年末までに郵送で届く)
- 地震保険料支払額証明書※(年末までに郵送で届く)
- 医療費控除を受ける場合は医療費控除の明細書(国税局のHPからダウンロード)
※=年末調整を受けている人は提出不要
確定申告書の書き方
確定申告書はA4判の用紙で、第一表と第二表の2枚があります。第一表に記入する項目と記入の順番(流れ)は次の通りです。
- 氏名、住所、マイナンバーの記入
- 収入額と収入から経費を引いた所得額を記入
- 基礎控除、扶養控除、寡婦控除などの控除額を記入
- 所得額から控除額を引いた課税所得額を記入
- 課税所得額に税率を掛けて計算した所得税額を記入
- 源泉徴収されている場合は源泉徴収額を記入
- 源泉徴収額が税額を上回っている場合は、還付金の額を記入
- 還付金がある場合は、受取金融機関の口座を記入
用紙の書式もこの流れに沿って作られています。
第二表には、第一表に記入した控除や源泉徴収の内訳などを記入します。自営業、フリーランスで確定申告書Bを使用する場合は、この他に「収支内訳書」に記入する必要があります。
確定申告書を書くときに注意したいことは?
「収入」と「所得」の違いに注意
会社勤務、パート、アルバイトの場合は、手取り額が給与収入で、そこからサラリーマンの必要経費にあたる「給与控除」を差し引いた額が給与所得になります。
自営業、フリーランスの場合は、売り上げや報酬から経費を引いた額が所得(事業所得)です。本業が給与収入で副業が給与以外の収入場合も、収入から経費を引いた額を「雑所得」の欄に記入します。
寡婦控除を忘れずに記入する
シングルマザーで離婚した人や夫と死別した人は、寡婦控除であることを忘れずに記入しましょう。子どもが16歳以上の場合は扶養控除も記入します。子どもが16歳未満の場合は、子ども手当が支給されているので扶養控除はありません。ただし、住民税は安くなるので第二表に扶養家族として記入します。
シングルマザーでも離婚や夫と死別したのではない、いわゆる未婚の母の場合、寡婦控除は受けられません。しかし、もちろん子ども手当や扶養控除は受けられ、住民税も安くなります。
分らない点は申告会場で聞くことができる
申告書の書き方で分らないことがあれば、申告期間中に申告会場で聞くことができます。必要書類を持参すれば、申告用紙に空欄がある状態でもOKです。申告会場が混雑しない2月中に行くと並ばずに済むことが多いためおすすめです。
また、会社で年末調整をしている人は、会社の総務または経理に相談すると、社会保険料の控除額などについて教えてもらえます。
申告しないとどうなるの?
確定申告する必要があるのに申告しないと、無申告としてペナルティが課せられる場合があります。それぞれについて、詳しく説明していきます。
無申告加算税が課せられる場合がある
確定申告をしないで放置して税務署から指摘されると、本来納めるべき税金に15%加算した無申告加算税が課せられることがあります。また、申告期限の3月15日を過ぎた日数分の延滞税が課せられることがあります。無申告加算税や延滞税は過去の年度にさかのぼって課税されることがあるので、大きな金額になる場合があります。
還付されるべき税金が戻らない
副業の収入が源泉徴収されている場合は税金の納め過ぎの可能性がありますが、確定申告しないと還付されません。
まとめ
離婚などをしているシングルマザーの確定申告では、寡婦控除の記入を忘れないようにしましょう。確定申告は最初の年は複雑で面倒に感じますが、2年目からは要領もわかってくるため楽になります。
確定申告で分らないことがあれば、申告会場でスタッフに聞けば教えてもらえます。会社勤務の人は総務または経理に相談するのも一つの方法です。シングルマザーとして忙しい日々を送っている人が多いと思いますが、税金の問題は後々大きな問題になることもあるため、適切な確定申告を行うようにしましょう。