同じひとり親であるシングルファザーと比較しても、シングルマザーは収入面で厳しい状況になりがちです。その解決策の1つとして生活保護を受けているシングルマザーは多いです。しかし、生活保護は申請すれば必ず通るというものではありません。
そこで、この記事では生活保護を受ける条件や支給額、受給後の生活、注意点など、生活保護の制度について解説していきます。
目次
生活保護でもらえる金額は!?制度のあらまし
生活保護とはどのような制度なのでしょうか。ここでは、申請の検討をする前に知っておきたい、その目的や気になる受給額の算出方法などを紹介します。
生活保護とは?
生活保護は、憲法に定められた最低限度の生活を営む権利を保障する制度です。厚生労働省では
「資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度」
と説明しています。
さまざまな手を尽くしたけれど、最低限の生活を送るのが難しいほどに困窮している人を支援する制度となります。
いくらもらえる?家賃は出るの?
生活保護は、決められた基準から計算した「最低生活費」と「収入」の差額が支給されます。最低生活費は地域ごとに定めた等級を使って算出するため、同じ条件でも住んでいる地域によって支給額が異なるのが特徴です。
具体的には、食費や光熱費、家賃など8つの分類ごとに必要最低限の金額を割り出し、そこに他の加算費用があれば加えます。シングルマザーの場合は、母子加算や児童養育加算などが対象です。生活する上で必要最低限の金額のみが実費で支給されます。
計算例は次のとおりです。
計算例)地方都市に住むシングルマザー 5歳の子どもが1人
最低限の生活費として算出した金額 月133,000円
パート収入と児童手当、児童扶養手当の合計額 月82,000円
133,000円-82,000円=51,000円 支給額は51,000円に決定
なお、生活保護制度の概要や地域ごとの等級などは、厚生労働省のHPで確認できます。
妊娠していれば加算?さまざまな補助のかたち
生活保護は、生活費を現金で補助してもらえるイメージが強いかもしれません。しかし、実際には次のとおりさまざまな支援があります。
- 年金など一部税金の支払いが免除
- 義務教育を受けるための学用品費の扶助
- 医療費の本人負担がゼロ など
母子家庭にとって学用品費や医療費の補助は、子どもを育てる上でとても助かる支援です。妊娠している場合も一定範囲内で実費が支給になるため、安心して出産できます。
生活保護を受けるための4つの条件
生活保護を受給するには、クリアしなければならない条件があります。ここでは、どのような条件をクリアする必要があるのか詳しく解説していきます。
条件①資産がない
資産は、貯金など現金に限ったものではありません。土地や建物などの不動産、保険、車など、資産価値のあるもの全般を含みます。仮に相続した家に住んでいる場合、家があることで資産があるとみなされて生活が苦しくても、受給要件は満たせません。所有する家を売却し、それでも困窮していることが生活保護を受ける条件になります。
条件②親族などから援助が受けられない
援助してくれる人がいないことも条件の1つです。両親や兄弟などの親族に加え、シングルマザーの場合は離婚した元夫なども含みます。これは、子どもを扶養する義務が父親(元夫)にはあるためです。
条件③仕事ができない
仕事ができないことも条件の1つです。働けない理由としては、病気や障害などが挙げられます。この場合は、医師の診断書などを申請時に用意しておくと手続きがスムーズになってよいでしょう。子どもに病気や障害があるために働けない場合も、状況によっては認められる可能性があります。
条件④児童扶養手当などをもらっても困窮している
母子家庭は、条件を満たすと児童扶養手当が支給されます。生活保護以外の支援制度を利用し、それでも困窮していることが受給の条件です。生活保護以外に利用できる制度があるならば先にそちらを申請し、それでも困ったときに頼るのが生活保護という流れです。
生活保護受給のデメリット!?6つの注意点
生活保護の条件を満たしながらも申請を取りやめる方がいます。なぜなら、受給によって生じるデメリットがあるからです。ここでは、生活保護を受けることにどのようなデメリットがあるのかを解説していきます。
車を所持できない
車を所持していると生活保護を受給できません。受給の条件は資産がないことですが資産の中でも、ネックになるのが車の所有です。仕事や子育て、家事に忙しいシングルマザーの場合、車がないと不便で困る家庭も少なくありません。
ただし、地域性など、状況によっては車を所持していても生活保護が認められるケースもあります。
すぐには支給されない
生活保護を申請してから結果がわかるまでは、通常は14日以内、場合によっては最長30日に延長するケースもあり、日数がかかります。申請後に福祉事務所による調査が行われるからです。
調査内容は、次のとおりです。
- 家庭訪問などによる生活実態の確認
- 預貯金や不動産など資産の確認
- 就労(仕事ができるか)の確認
この過程で援助できる親族がいないかの調査も行われます。調査を少しでも早く終わらせるためには、事前に福祉事務所に相談し、申請時に必要書類を漏れなくそろえておくことが大切です。
用途が決められたお金
生活保護は家賃、光熱費、食費などという具合に目的に応じて支給されるため、他の目的に使える余剰金がありません。賭け事やぜいたく品の購入に使えないのはもちろんのこと、子どもとのレジャーにも使えないなどの制限があり、賃貸物件の契約の際も家賃に上限があるため、選べる物件が限られます。
子どものための貯金ができない
「生活費を少しでも切り詰めて子ども将来のために貯金をしたい」と考える方は多いのではないでしょうか。しかし、生活保護の支給中は貯金ができません。シングルマザーには見過ごせない大きなデメリットです。
ただし、貯金は一律にダメとされているわけではないため、ケースバイケースで一定額までは貯金が認められることもあります。
彼氏と同棲できない
厳密には、交際相手の有無や同棲に関する規定はなく、あくまでも恋愛は自由です。ところが実際には、彼氏から家賃や生活費の援助があるのではないか、生活保護費で交際相手も飲食しているのではないかといった問題が浮上し、受給に支障が出てくることがあります。
この背景には後を絶たない不正受給者の実態もあり、なかには「生活保護のお金で男性と遊んでいる」などといわれのない非難を受けて福祉事務所に通報されたケースも存在します。恋愛中は誤解を招く行動は慎み、金銭的な援助が受けられる場合は自ら受給を停止するなど、きちんとした手続きを踏むようにしましょう。
急に減額や打ち切りになる可能性も
生活保護を受けている期間は、随時調査が入ります。調査は、自立した生活ができるようになるための支援の一環ではありますが、生活実態によって支給の打ち切りや減額が行われる可能性があります。
受給できるようになっても長くはあてにせず、生活の立て直しを考える必要があります。担当者と相談しながら、無理のない計画を立てることが大切です。
生活保護の審査に通らなかったらどうする?
生活保護は審査基準が厳しく、自分では生活が苦しいと感じていても落ちることがあります。申請しても結果が出るまで油断できません。ここでは、生活保護の審査におちた場合にどうするべきかを解説していきます。
他の制度の利用を検討する
生活保護は、他の制度を利用しても困窮していることが前提です。しかし、審査に落ちた後に利用できる制度はあります。
「母子父子寡婦福祉資金貸付金制度」は、単身で子どもを養育している人などを対象にした制度で、生活や就業などに必要な12種類の資金を無利子、または低金利で借りられます。
「母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業」は、給付金を受けて資格取得を目指すもので、安定した収入を得るには有効な手段です。受ける講座の指定を受ける必要がありますが、修了すると経費の60%が支給されます。
生活保護の審査に落ちることが利用条件ではないため、生活保護を申請せずにこれらの制度を利用する選択もあります。
1人で悩まず相談する
子どもを抱えて生活が困窮すると精神的に追い詰められます。そこにきて生活保護の審査にも落ちたら、精神的な負担は相当なものとなるでしょう。このようなときに1人で悩むのは、自分自身が辛いだけでなく子どもにもよい影響はありません。
シングルマザーを支援しているNPO団体などに相談して、苦しい悩みは支援の手を借りながら解決策を探してみてください。
まとめ:生活保護は最後の手段!まずは相談を!
生活保護は最低限の生活を保障するものではありますが、審査が厳しく受給後もさまざまな制限があります。しかし、生活がひっ迫している場合は早めに申請することが大切です。
生活保護は必ず受給できるものではありませんが、受給のための条件を満たしているのなら申請をためらう必要はありません。子どもとの生活を守ることを第一に考えて行動していきましょう。