シングルマザーの中には、経済的に苦しい状態になっている人も多いのではないでしょうか。生活が苦しいシングルマザーにおすすめしたいのが、自治体が行っている移住支援制度の利用です。この記事では、シングルマザーの移住を支援する自治体の取り組みについてご紹介していきます。移住に興味があるシングルマザーはぜひ参考にしてください。

シングルマザーに移住がおすすめの理由

ここでは、自治体がひとり親の移住を支援する目的と制度の主な内容、定住によって得られるメリットやデメリットなどについて解説します。

不安定な経済状況の母子家庭

厚生労働省が公表した平成28年度全国ひとり親世帯等の調査結果によると、母子世帯の44.2 %が「正規の職員・従業員」、43.8%が「パートやアルバイト」などの非正規雇用となっています。

家計のためには正規雇用が望ましいのですが、未就学児童や小学校低学年の子どもがいるシングルマザーにとってフルタイム勤務は難しく、パートやアルバイト勤務になってしまうのが現実です。

パートやアルバイト勤務だけでは経済的に苦しくなることが、母子家庭の貧困率を高める一因となっています。シングルマザーの移住を歓迎する自治体では、さまざまな支援策を設けて、母子家庭が自立できるような取り組みを行っています。経済的に苦しいシングルマザーにとって、嬉しい支援制度になるのではないでしょうか。
 
参考:厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」

移住支援する自治体にもメリットがある

ひとり親の移住を支援する自治体の目的は、「地方創生」です。地域の人手不足や少子化問題を解消したい自治体では、母子家庭に移住してもらうための支援策に取り組んでいます。特に、人手不足が深刻な介護士や保育士を必要とする自治体もあるので、資格を所有しているシングルマザーは移住を検討してみてはいかがでしょうか。

また、介護士資格がないシングルマザーに対し就業支援を行っている自治体もあります。ただし、移住にあたっては、子どもが中学生・高校生以下などといった条件が付いている自治体が多いため確認が必要です。

自治体が行う主な支援策

移住を支援する多くの自治体で見られる支援策をご紹介します。なお、自治体ごとの具体的な移住支援策については後ほど紹介させて頂きます。

住宅支援

金額に上限はありますが、移住を歓迎する自治体では住宅支援金を出しています。住宅支援金の内容は家賃や引っ越し費用などに対し補助金を出すものです。補助金の額については自治体で異なるため確認が必要ですが、移住を検討するシングルマザーにとって、この支援制度は魅力あるものです。
就労支援

就労支援の一環として、ジョブトレーニング付き、職場体験や保育園の見学ができる自治体があります。

子育て支援策

子どもの年齢に期限はありますが、子育て支援策の一環として医療費無料とする自治体があります。子どもが複数人いると医療費の負担がかさむため、これは嬉しい制度です。この他にも延長保育を利用できる、学童保育料を低額に設定するといった子育て支援策で、働くシングルマザーを応援する自治体が多数あります。

移住者同士のコミュニティをつくり、情報交換の場を設ける

移住者同士でつくったコミュニティに参加すれば、仕事や地域、子どものことなどの情報交換できます。知らない土地に移住した者同士で共感できる部分もあり、知人の輪を広げていけます。

移住コーディネーターに相談できる

自治体には移住者をサポートするためのコーディネーターがおり、疑問点や悩みなどを相談できる環境が用意されています。

シングルマザーの移住にはデメリットもある

シングルマザーの移住支援にはメリットだけではなく、デメリットもあります。ここでは、どのようなデメリットがあるのかご紹介していきます。

車が必要な地域がある

地方では、電車やバスの本数が少ない地域が多く、自家用車が必須となるところが多いです。そのため、自家用車を持っていないシングルマザーは、移住が難しいかもしれません。ただし、移住支援策の一環としてシングルマザーの中古車購入に補助金を出す自治体もあります。車が必要な地域に移住を検討している場合は、車関係の補助金が用意されていないか確認するとよいでしょう。

田舎の雰囲気に馴染めない

都市部で生活していた人にとって、田舎の雰囲気やコニュニティーは馴染みにくく、地域の方言や習慣に慣れるのも大変です。

このデメリットを解消するには、移住者同士のコミュニティを利用して親交を深めてみましょう。移住者にしかわからない悩みや喜びを共有でき、孤独感が解消されたり、地域の情報が得られたりするメリットがあります。コミュニティや職場などで知人の輪を広げていき、地域に溶け込んでいくようにするとよいでしょう。

転園・転校の可能性がある

保育園や学校を途中で変わるとストレスを感じる子どももいます。できるだけ、入園・入学などのタイミングを見計らって、移住するとよいでしょう。

婚活もあり!?シングルマザーの移住を支援する団体の紹介

シングルマザーの移住を支援する自治体や民間が連携して団体を作り、日本各地にネットワーク持っています。ここでは、「ひとり親地方移住支援ネットワーク会議」と「日本シングルマザー支援協会」の2つの団体についてご紹介しましょう。

ひとり親地方移住支援ネットワーク会議

ひとり親地方移住支援ネットワーク会議とは、7つの自治体が連携する組織のことで、ひとり親家庭を受け入れるための事業を展開しています。参加している自治体による取り組みをご紹介していきます。

兵庫県神河町

神河町では住宅や就業の紹介・相談、ジョブトレーニングやシングルマザー移住者の交流会などの開催なども行っています。特に、保育士や介護職に就きたいシングルマザーを歓迎しています。子育て支援策としては、家賃や引っ越し費用の補助、高校卒業まで医療費無料などがあります。短期宿泊できる無料の宿泊体験施設を利用して、移住するかどうかを決めることもできます。

参考:神河町 シングルマザー移住支援事業

北海道幌加内町

幌加内町(ほろかないちょう)は介護事業所に就職するシングルマザーに対し、さまざまな支援策を行っています。ただし、中学生以下の子どもを持つ町外のシングルマザーで、幌加内町に定住できる人に限定されています。

介護事業所への就職にあたって、資格は必要ありません。支援策の内容は、介護事業所の給料を月額17万円の水準で確保する「給料保障」、月額3万円の「養育支援補助」、「家賃の補助」、引っ越しの際の「支度金補助」などがあります。子育て支援としては中学校3年生までは医療費が無料となります。
 
参考:幌加内 町移住・定住情報

静岡県伊豆市

伊豆市では、ひとり親家庭の移住・定住相談、就業移住ツアー、婚活イベントなどの開催をしています。子育て支援として、保険診療分の医療費を全額助成(高校3年生まで)、高校生のバス通学費の助成などで、ひとり親の負担を軽減しています。この他にも、さまざまな情報の発信やイベント開催なども活発に行っており、育児で迷いがちな親を各方面からサポートしています。
 
参考:伊豆市 ひとり親移住定住促進プロジェクト

長野県須坂市

須坂市にはひとり親の移住者の受け入れに協力する企業が30社あります。職種は製造業、サービス業、農業、IT関係など多岐にわたります。須坂市のホームページには、受け入れ企業30社のプロフィールが掲載されているので、自分に合いそうなところがないかチェックしてみましょう。

さらに、「ひとり親家庭移住体験ツアー」に申し込めば、受け入れ企業の見学、市内の空き住宅の相談、スーパーや病院といった住環境の確認も可能です。須坂市では東京だけでなく、大阪、名古屋でも移住相談会を行っているので、近隣に住むシングルマザーは問い合わせてみてはいかがでしょうか。
 
参考:須坂市 ひとり親家庭移住支援

群馬県

2019年3月、群馬県内の21市町村が参加する移住・定住相談会が東京で開催され、地域の特色や支援策について紹介する機会が設けられました。群馬県にはシングルマザーの移住を歓迎する市町村が21もあり、その中から自分の希望とマッチングする地域を選べます。関東圏から離れたくないシングルマザーは、群馬県を選択肢に入れても良いでしょう。21の自治体の支援策については、下記のサイトを参考にしてください。
 
参考:群馬への移住を考える人のためのライフスタイルWEBマガジン

島根県浜田市

浜田市では、移住者の増加と地域の認知度を上げるために、東京で「ひとり親のための合同移住相談会」を開催しています。浜田市への移住希望者には、宿泊体験の滞在費補助、出会いイベントなどを行うなど、ひとり親家庭を歓迎しています。支援策やイベントなどについての詳細は、浜田市のホームページで確認してください。

参考:浜田市 定住支援・出会い応援情報

山形県

山形県では、移住・定住する単身者、ひとり親家庭を対象に住まい・食・仕事を支援する制度を充実させています。住まいや仕事の紹介・相談、子育て支援策は他県でもありますが、食の支援として条件を満たした移住者に山形県産の米・味噌・醤油を支給する制度は、他にはない取り組みと言えるでしょう。

また、東京から山形への移住・就業をした人には、最大で100万円の移住支援金を支給する制度もあります。東京在住のシングルマザーは検討してみてはいかがでしょうか。
 
参考:山形県移住交流サイト

 

日本シングルマザー支援協会

一般社団法人「日本シングルマザー協会」は、シングルマザーの自立や再婚、コミュニティについての情報を提供する活動を行っています。情報を得るには協会の会員になる必要がありますが、登録・会費は無料です。ここでは、2019~2020年にシングルマザー支援協会と自治体が連携して開催したイベントについてご紹介します。

福井県

2月11日、東京で:「福井県インターンシップ移住フェア」が開催され、担当者から支援事業について説明がありました。このイベントではオンライン参加も可能ですから、直接現地に行けない人にもおすすめのイベントです。

信州木曽郡

2019~2020年にかけて、信州木曽郡(長野県)の男性たちとのお見合いフェアが名古屋で開催されました。このお見合いフェアをきっかけに5組の男女が成婚した実績もあるそうです。お見合いフェアと同時開催で移住相談会も開かれているので、婚活目的でない人も相談してみてはいかがでしょうか。

新潟県妙高市

2019年10月、シングルマザー支援協会の代表である江成道子さんによるシングルペアレントのためのセミナーが東京で開催されました。セミナーの中で、新潟県の妙高市と上越市の移住支援策も紹介されました。妙高市と上越市では、シングルマザー向けに交通費や引っ越し費用、車の購入費などに補助金を出すほか、住宅・就業の相談も受け付けています。

セミナーは託児付きのため、小さな子どもがいるシングルマザーも参加可能です。首都圏から新潟と言えば遠い印象もありますが、北陸新幹線や高速道路を利用すればアクセスも良好な立地ですから、選択肢の1つに入れておくとよいでしょう。

東京国際フォーラムでワークショップ開催

 
2019年11月、東京国際フォーラムにて地方自治体(北海道喜茂別町・静岡市・鹿児島県十島村・長野県朝日村)がワークショップを開催しました。このワークショップでは、初めて移住するシングルマザーのために、担当者が就職活動の仕方や移住のポイントなどについて説明しました。

このようなワークショップに参加する場合、子どもの預け先が心配なシングルマザーもいるでしょう。そんな人のために、子どもの年齢層に合わせたワークショップも開かれています。これは、バッジ作りや楽器作りなど複数のワークショップがあり、子どもが興味を持って楽しめるイベントです。地方に出向く時間がない東京近郊のシングルマザーは、子どもと一緒に参加するのも良いでしょう。
 

シングルマザーの移住先には海外もある?

語学が堪能で留学経験を持つシングルマザーの中には、海外への移住を検討した人もいるのではないでしょうか。ただし、単身ではなく子ども連れの場合は、越えなければならないハードルがいくつもあります。そこで、ここでは海外移住のメリット、デメリットについて解説します。

海外移住のメリット

解放感

海外移住の最大のメリットは、日本にいるときは、苦痛を感じていた元夫、親族、友人、会社の人間関係などのしがらみから解放されることです。

子どもの語学力を伸ばせる

ネイティブな発音が自然に身に付き、子どもの語学力を培うことができます。特に、多数の国の公用語である英語力があれば、グローバルに発展する企業への就業を目指しやすくなります。

海外移住のデメリット

移住費用がかかる

物価の安い国に引っ越す場合でも現地を下見するための渡航費用、住宅にかかる費用など、さまざまな負担がかかります。移住を支援する日本の自治体に行くわけではないため、さまざまな支援策を受けることもできません。さらに、日本の健康保険も海外では使えないため、それに代わるものが必要です。

語学力

語学が得意でないシングルマザーの場合、移住先の言語を習得するまでに時間がかかり、仕事や住まい探しを含む日常生活に支障が出ます。小さな子どもは病気にかかりやすく、病院を探すのも大変です。語学力が堪能であったり、現地に頼れる親族や知人がいたりするシングルマザーは別ですが、語学力の弱い人が海外へ移住するのは難しいでしょう。

異文化に馴染めない

さまざまな人種がいる海外では日本の常識が通用しません。移住・定住するには、価値観の違いを受け止める柔軟性が必要でしょう。

移住を迷っているシングルマザーは宿泊体験・イベントに参加してみよう!

子ども連れの移住が不安なシングルマザーは、自治体が行っている宿泊体験やイベントなどに参加して、地方の雰囲気を体感してみましょう。移住先を検討するときは、支援の手厚さだけではなく、住みやすさも考える必要があります。複数の自治体を比較検討して、自分と子どもに最適な場所を見つけ、新生活のスタートを切りたいものです。

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